夜明けの陽ざし

サイクリング

これからずいぶん年月が経つと、このHPのこのページも、「Covid-19コロナウイルス」に直面していた時代の懐かしい一コマになるのだろうか?
そう願いたい。
現実の2020年5月30日土曜日は、首都圏に発令されていた緊急事態宣言が5月26日に解除された後の初の週末。
解除されたとはいえ、ここ数カ月間の知見で得られた様々な感染対策が求められ、ビジネスもまだ業種によっては制限が多い。
首都圏は、都道府県を超える行き来は自粛が求められている。

そんな中、同じ県内にある湘南国際村まで車でロードバイクを積み、ささやかなサイクリングを楽しんだ。
横浜横須賀道路や逗葉新道を降りた先は車が一杯で、湘南国際村近辺もサイクリングを楽しむ人が多いかと思ったが、そうでもなかった。
特にロードバイクを乗っている人はまだわずかで、”蜜”には程遠い状況で安心のライドであった。

学生時代はウインドサーフィンをやっていたので、逗子や三浦半島へは車でよく来ていた。社会人になって横浜市に住むようになってからは湘南・三浦半島は近くなったのでドライブでよく来ている。
しかし自転車でゆっくり走るのは初めてだ。
この数か月間、週末は家の周りを1時間以内、マスクをしてクロスバイクに乗っていたが、自宅を離れたところを乗るのは久しぶりだ。
新しく買いなおしたエンデュランス・ロードバイクBianchi Infinito CV 2020では初めての本格的なサイクリングになる。
新鮮な緊張感だ。

一度はあきらめたロードバイクの趣味。
再びロードバイクで自宅から離れた土地を一人で走る感触。
朝から眩いばかりの光を浴びて迎えた道は、何か新学期や新年度の始まりのような初々しさに満ち溢れ、不安よりも素直に喜びが勝った。

217号線の長いトンネルを通り抜ける。そこから先は意外に長い登り道が続く。
久しぶりのサイクリングで高揚して登ったが、本命の湘南国際村入り口前のコンビニに着いた頃には、結構息が切れていた。
しばし休んで周りを見渡す。
普段はもっとロードバイクの人が大勢休んでいる場所のようだが、本日はまだほとんど人がいない。

ここからいよいよ湘南国際村センターに向かって登っていく。
綺麗に整備された道の両脇を眺めながら、坂を漕いでいく。
車はほとんど走ってこない。
無言でゆっくりと右へ回るカーブを走っていく。
ほどなく湘南国際村センターを通り抜け、しばらく走ると行き止まりのUターン・ロータリーがある、めぐりの森の手前に着いた。

ここで一休み。
呼吸を整え、ボトルの水を飲む。
目の前に広がるめぐりの森の上には、青い空に白い雲がかかっている。


全力で自転車を漕ぎ真っ白になった頭で眺める空は、小さい頃に見た懐かしい空がだぶって見えるから不思議だ。
ひとしきり休むと、来た道を下りコンビニまで降りていく。
右へ曲がると来た道に戻るが、左へ曲がり海が見える秋谷入り口までひたすら下って行った。

3か月近く自粛が続いた生活の後で見る、久しぶりの海の景色。
私は湘南よりも三浦半島の景色の方が好きだ。
秋谷から見える光景は、何の飾り気のない海と空の魅力を、“はい、どうぞ”と提示されているように感じされる。
見せられる側の自分は、ただただ時間をかけて味わうしかない。
こんな対話を今まで幾度となく繰り返してきた。
そんな記憶が蘇る。

振り返り、今下ってきた道に自転車の向きを変える。
来た道を上って、めぐりの森までは約3.5kmだ。
ひたすらペダルを漕いで登っていく。
始めて走る道なのでペースがわからない。最初の登りで少し飛ばし過ぎたようだ。
中盤の道沿いにはお洒落なカフェやレストランが並んでいる。



どの店も素敵な佇まいだ。
今度は車で来てゆっくり食事でもしよう。
そんなことを思いながら通り過ぎた。

結局、秋谷入り口とめぐみの森の道を結ぶ道を2往復した。
下りはゆっくりと景色を堪能し、途中で写真を撮ったりした。
本当はカフェに立ち寄り、マスターや人との交流を楽しみたいところだが、”自粛“が頭の中でブレーキをかける。

そう遠くない将来に、新しい人との出会いが自然に楽しめることができる日が来ることを願う。
「明けない夜はないよね」
そんなことを笑いながら言い合える日が来ることを。

この日は、そんな将来の楽しみを胸にしまい込み、一人黙々と帰り道を走り帰宅した。


(終) 2020年5月30日

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