立ち止まることのない道 - 西伊豆スカイライン

サイクリング

西伊豆スカイラインに行ってきた。
この日はコロナウイルス感染拡大防止のための都道府県をまたぐ移動自粛要請解除後、初の週末。高速道路も観光地各所、どこも渋滞だろうと覚悟して家を出た。
梅雨の期間中、少しでも晴れ間の出る日はそうないと思ったからだ。
東名高速は案の定、事故渋滞。計画が大きく狂ってしまった。
予定より一時間オーバーで横浜町田ICから程ない事故現場を通り過ぎる。

東名高速で遠方に行くのも久しぶりだ。
音楽をかけながら車を走らせ、ようやく長泉沼津ICを降りてからも道のりは長い。
あくせくするのはやめ、途中の道の駅「伊豆ゲートウェイ函南」で一休み。
とても明るい雰囲気で建物の中を入ると、レンタル・サイクリングのコーナーがあった。

11時にようやく戸田峠駐車場についた。
今日はここから達磨山、土肥峠の西伊豆スカイライン終点を抜けて、仁科峠まで上がる計画だ。
西伊豆スカイラインは自転車で走ることはできるものの車でドライブを楽しむための道路だ。
途中、一切、自動販売機も売店も何もない。

今日は、新しく買った自転車用品を試すサイクリングでもあった。
”リアビューレーダー“(Garmin Varia RTL510)といって、自転車の後ろに取り付けると、後ろから来る車やバイクを知らせてくれる便利な機材だ。



100mぐらい前から検知し、距離が近づくとその距離を教えてくれる。
私はハンドルに同じメーカーの機材(Garmin Edge 830)をつけているので、その画面にわかりやすく表示されるのだ。
リアビューレーダーの効果への期待で頭がいっぱいの一方、
安易な自分の計画・準備不足が露わになる旅であった。
まず自分の体力で仁科峠を目指すのは無理があった。
そして11時から仁科峠を目指すのは途中で昼食が必要なのに、昼食ポイントを考えず出てしまった。
今日は他にも失敗の多いサイクリングのスタートである。

まずは意気揚々のサイクリング気分で駐車場を出発する。
達磨山に向かう道は自分にはきつい坂が多い。
今日の景色は晴れのち曇り。富士山やここら辺の山々は昼前から雲が多くなってくる。
撮影はゆっくり帰り道でと思ったが、出発が遅くなったこともあり、少しでも良い景色のうちに、登りでも景色の良い地点で撮影をする。
横浜からは近いようで遠い西伊豆。
自宅から戸田峠まで渋滞があったとはいえ4時間。
気軽に来れそうで少し気合いがいる。
だからこそ景色に心も奪われる。



遠方の登り道が見える景観がいい。
もう富士山が見える天気ではないので、マイペースで行くことにする。

とはいえ、自分の体力相応以上に飛ばし過ぎた。
4km以上下り坂をおりると、西伊豆スカイライン終点、土肥峠についた。
ここからの登りは結構エネルギーを使う。
仁科峠に行こうか?考え、結局行くことにした。
カバンにはコンビニで買ったエネルギー・チャージ一つ。

風早峠を越え仁科峠に向かう長い登りの道。
体力が削がれているのがわかる。

今日はここから撮影以外に休憩も入れて何カ所で足を止めた。
そこで気づいた西伊豆スカイラインの顔。
車で通りすぎるだけでは気が付かない一面を垣間見た。
冒頭にも書いたが、西伊豆スカイライン、そして仁科峠も含めて、駐車場こそあれレストランはおろか自動販売機すら一切ない。


ただひたすら木々に両面を囲まれたつづら折りの道を車やバイクで走り、時折見える雄大な景色を楽しむ道になっている。
ポイントポイントで車を止めて景色を眺める場所以外は、人が立ち止まったり歩いたりすることは想定していない。
そのような空間に足を止めると、何か人を寄せ付けない空気を感じるのだ。
実際、足を止めて休めたりカメラで撮影していると、蜂や虫がたちどころに寄ってくる。
まるで人を追い払うかのように。


なにげなく足元を見ると道に小さな石の塊が落ちている場所が多い。
車が通れる限り、誰かが綺麗にすることはない。
ここを人が歩いて通ることは想定していないのだろう。
立ち止まることで全く違う顔を見せる不思議な道が西伊豆スカイラインだ。


なんとか仁科峠に着くが、体力の限界。
しばらく休む。
カバンに入れたエネルギー・チャージだけでも飲もうとするが、見つからない。
どうやら車に忘れてしまったようだ。
絶望的な気持ちになり、しばらく横になって休む。
これだけ時間のかかる道のりになるのなら、昼食を持ってくるべきだった。

この日は県をまたぐ移動解除の最初の土曜日なので、もっと多くの車やバイク、サイクリストが多いかと思ったが、思いのほか少なかった。
仁科峠では私の他に寝転んでいるバイクで来た人が一人。
後は車が2台ほど来たぐらいだ。

ひとしきり休んで、若干体力が回復すると今来た道を走った。
向こう見ずなサイクリングになってしまったと後悔しながら、
後半の土肥峠から戸部峠の5kmほどの登りを覚悟しながら帰路に向かう。



ボロボロになりながら、達磨山頂上途中、小土肥駐車場の休憩所で休んでいる時に何か急に体力が覚醒した気がした。

今回の準備・計画には大いに反省しながらもここまでの道のりを思い浮かべる余裕も出てきた。
空もう曇りで周りの山の頂は白い雲が覆っている。
なんとか登りを終えてようやく待望の下り道を走り始めた。
後は駐車場まで数キロ下るだけだ。
体力の限界も超えて帰れるかどうか?という危うい状況も乗り越えて、悠々と下る気分は最高だ。
時間は16:00近い。
いよいよこのあたりも白い霧に覆われてきた。
早く帰らなければ。

そう思って走っている最中に、リアビューレーダーが落ちる大きな音がした。
実は行く途中でも一度落としている。
通常はサドルポストに取り付けるのだが、私はサドルバックを取り付けている。
なんとかサドルバッグに取り付けたいと思い、取り付ける部品も買いさらにマジックテープも使って止めたのだが、どうやら購入した部品の締まりが甘いようだ。
舗装した道を走る振動でも結構なものがある。
自転車を止めて落としたあたりを探すが、見つからない。
不思議だ。
路上には見つからなく、左側は溝があるがそこにもなさそうだ。
溝の左側は覆い茂った草むらが横たえている。
帰路の前方には白い雲がかかり始めている。
ここでも西伊豆スカイラインの“人が立ち止まることを許されない”空間が顔を出し始めた。
整備された眺めの良いドライブコースで、自然の畏敬を感じた瞬間である。
道路を囲う木々のすぐ向こうには人が全く干渉のしない自然の世界が確かにあるのだ。
まるで追い払われるように、探すのはあきらめてそのまま自転車を漕ぎだした。

這う這うの体(ほうほうのてい)でなんとか駐車場にたどり着いた。
車の中に忘れたエネルギー・チャージを飲み干す。
いろいろ反省の多いサイクリングだった。
しかし伊豆は自分の住む神奈川県と隣接する静岡県に広がる見どころの多い土地だ。
今度はもっと人や店と交流のできる場所を選んで、旅を続けたい。

苦労や失敗が多くとも、旅は楽しいと思いたい。

今日一番綺麗だった青空を思い浮かべながら車を走らせ、修禅寺に向かった。


(終) 2020年6月21日

コメント

  1. […] 今年の6月に行ったところ。HPはこちら。立ち止まることのない道 - 西伊豆スカイライン今から見たら体力もまだ十分でなく、なにより食事や全体の時間管理が甘く、体力の限界を超え […]