雲海と水中を眺める旅

サイクリング

まだ梅雨の明けぬ4連休。天気は相変わらず悪い。
2日目の今日は雨の確率が低かったので、朝早くから湯河原に向かった。
東名は比較的順調で海老名PAでゆっくり朝食を食べる。
今日は湯河原から箱根の大観山へ続く椿ラインという15kmほどの道を走る計画だ。
急な坂道はないが1時間超、延々と登り続けるコースである。
今までの教訓から、最初に飛ばさないようじっくりゆっくり坂道を淡々と登るつもりだ。
海老名PAを出て湯河原に向かうが、空はどんより曇っている。そして山々の中腹には雲海があちこちに見える。
これが遠くから写真撮影をする分には絶好の景色だ。
しかし、今日の自分は標高100m地点から1,000mを15km超、自転車で走り続けるのだ。
見たところ、後半はずっと白い雲の中を走り続けるように思える。
気が重くなってくる。

湯河原に着いて車を駐車場に置き、ロードバイクを走らせた。
気温が高くないのは幸いだ。川沿いの温泉街の道を走り始める。
この段階から傾斜のある登り道が始まっている。


椿ラインに入り、木々に囲まれた道を上っていく。
ほどなく走って右手を見ると、隣の山との間に雲海が広がっているのが見える。
ずいぶん低い位置だ。
これほど間近に雲海が広がっているのを見るのは初めてだ。



椿ラインは景色を見れるポイントはあまりなく、時々見える雲海が大いに気持ちを楽にさせてくれる。そうでないと1時間超、延々と続く登り道は苦行以外なにものでもない。
途中、「しとどの窟」というポイントで休憩場所がある。
風景の撮影はほとんど下りで行ったが、一カ所に比較的近いところで雲海の景色がよく見えたところがあったので、思わず足を止めて何枚か撮影した。



今日は本当に来てよかったと思う。
結局、雲の中を走ることは一度もなく、走り続けることができた。

ほどなく大観山の目的地、「アネスト岩田スカイラウンジ」にたどり着いた。


自分の体力でも余裕を持って走れたので、トレーニングを兼ねてまた来たい場所だ。
昼食をとるには早かったので、すぐに下ることにした。

湯河原でランチとも思ったが、あまり良い店を見つけられず、今日の第二の目的地、真鶴へ車を走らせた。
真鶴は好きな土地だ。一人でドライブにもよく来たし、家族でも何度か来たことがある。
必ず立ち寄っていたのが「海辺の途中」というイタリアン・レストランだった。
大きな海水魚の水槽が置いてあったり、店内がとにかく綺麗でセンス抜群のお店だった。マスターによくお話を伺ったが、リゾート地の理想のレストランだった。
残念ながら数年前に閉店してしまっている。久しぶりに店の前を通ると、建物と看板はまだ昔のままだった。
いつかこの地で、「海辺の途中」ぐらい素敵なお店ができることを期待したい。

一気にケープ真鶴まで来てしまった。
中のレストランに入り、カキフライ定食を食べた。カキは宮城から入荷したものだが、お店イチオシのようだったので注文してみた。
海を見ながら食べるカキは格別だ。
15kmのライドの疲れも忘れさせてくれた。
食事を終えると海岸へと向かった。

今日、真鶴に来たのは目的がある。
OlympusのTough5という水中撮影可能なカメラを持って来ている。
ここは海岸の岩場の入り組んだところに潮が引くと、海水と一緒に魚やカニが取り残されているのが見えるのだ。
ひとつ一つのくぼみが、さながらプライベート水族館のようだ。
ここでこの小さな”小宇宙”を眺め、水中撮影をするためにやってきたのである。
周りを見渡すと、今日も家族連れが多く、子供たちが一生懸命、魚やカニを探している。


遠方には真鶴半島の先端中の先端、三ッ石が見える。
真鶴半島は上空から見ると、鶴が羽を広げている姿に見える。
上品に羽ばたく鶴の頭の位置にいるのだ。

岩場を歩いていく。
自分のプライベート水族館を探すのだ。


誰もいない一角を見つけると、じっくり海面の上から中を覗く。
目が慣れると魚がすばやく石から石へと泳いでいるのがわかる。


貝もゆっくりと動いている。
ここで時を忘れて小さな海中の世界を眺めるのが大好きだ。
今はだいぶ潮が引いている時間だが、数時間後、また海水がこの一帯を覆うと、
この魚たちは別の場所に移動するのだろう。
彼らにとっては、私と同じく、しばしの観光気分かもしれない。
子供たちに見つからないといいが。
水中カメラを海中に入れて撮影する。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA


どんな撮影ができているか?は家に帰ってじっくりみないとわからない。
何枚かは魚に向けて撮ることができた。

こういう時間は楽しい。
毎度のことながら、夢中になれる。

家に帰って画像をじっくり見てみる。
雲海の写真はどれもよかった。
三ッ石が海と空に向かって伸びている写真もよかった。
そして海中で撮った写真でうっすらと魚が写っているのがみえた。
ぼんやりとこちらをのぞき込んでいる。
何より自分が落ち着く写真がこれだ。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

実際には10数センチの水深にすぎないが、立派に海底の雰囲気を醸し出している。
いつまでも海底のこの石に腰かけて、息をひそめて休んでいたい気分だ。


(終) 2020年7月24日

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