湯河原でビーフシチュー

サイクリング

お盆休みシーズンに入った。
自分は8/12(火)だけ仕事で水曜日(8/13)からは休みを取っている。
せっかくの夏休み、行きたいところを考えていたのだが、先日ビアンキ横浜店から、注文していたホイールが入荷したという知らせがあり土曜日につけてもらった。
自転車は完成車の場合、フレームの重量や性能が基本的な価値を分けるのだが、次に重要なのはタイヤのホイールだ。完成車の場合、割安で販売するためにあまり高性能なホイールをつけていない場合がほとんどで、ロードバイクに凝り出すと、次に買い換えるのはホイールが多い。自分の場合はもともとついていたホイールもそれほど悪くなかったのでまずは使ってみて、しばらくしてから何を買うか考えよう、と思っていた。
この数か月、ホイールは考えていたのだが、迷っていてなかなか決まらなかった。
結局、当初の筆頭候補、BORA ONE 35というホイールに決めた。
色も地味なダークカラーの方にした。性能も見た目も、私が乗っているBianchi Infinito CVに合っている気がした。自分の場合は、見た目は控えめな方が感じで統一したほうが良いと考えていた。
せっかく連休の初日にホイールが届いたので、まずは試走ということで、今日は再び湯河原から椿ラインを通って大観山を目指すことにした。
前回走ったデータもあるので比較もできる。

猛暑の中、15kmも峠の坂道を登り続ける体力があるか??前回のデータと比較するのに今回あまりに過酷な状況だと参考にならないと思い、4時に起きて早めに現地に着いた。
自転車を走らせると、少し風が強い。
28°ぐらいで、その後もあまり暑くはならなかった。木々に覆われているので体感的には前回走った時より少し暑いぐらいで済んだ。

思えば昨年からロードバイクに乗り始め、何十年も運動してこなかった体を鍛えるためにスポーツジムに通い始めた。その数か月後には骨折して中断があり、今年の3月から再開した。今はこれぐらいの峠も登れるようになっている。50代後半で大した成長はないだろうが、それでも自転車が楽しめるぐらいに体力がついたことは感慨深いものがある。
鬱蒼と茂った木々の合間を抜ける椿ラインの道を独りペダルを漕ぎながら、そんなことを考えた。

15kmの坂道は退屈だ。
実際には次から次へと坂の傾斜の微妙な変化に合わせてギアを変えたり自分の心拍数や速度を見ながら漕いでいるので気がそれているが。その繰り返しで1時間30分ほどが過ぎる。嫌がおうにも気分はすっきりする。ハードな禅のようなものか?

頂上付近は風が強く、霧が濃かった。
頂上からは何も見えない。


自転車を立てかけて写真を撮ったら、直後に突風が吹き自転車が倒れた。
霧はみるみる濃くなってくる。
退散するように来た道を下った。

新しいホイールは自分のロードバイクに合っている気がする。
前のタイヤよりも軽量で、回転がよりスムーズなようだ。
走り始めの軽さ、平地である程度スピードを出すまでの足の負担が軽い。
下りは危険なぐらいスピードが出る。回転性能の良さ所以だろう。
それが故に今まで以上に下りはブレーキに力を使った。
下りの時にホイールが回っている中心部、ハブが高速回転している音が心地よい。
音は非常に小さいが、軽快に回る音に品がある。
良い製品はこういう音にも製品の個性を出すために作っているのだろう。
自分はもともとイタリアと繋がるために自転車を始めたのだ。
今回買ったホイールもイタリア製だ。
走りながら、イタリア製のホイールが奏でる音を聞き続けた。
来週は久しぶりに長女が帰省する。
全ての繋がりを思いながら下りを駆け抜ける。

一旦、自分の車のところまで戻ると、少し休憩して、もう一度椿ラインを登った。
ただし頂上までではなく、9kmぐらい走ったところにある「しとどの窟(いわや)」という休憩所までだ。今日はここまでで十分だ。
2本目は1本目よりも流石にスピードも遅い。何とか登り切れば合格だ。
だいぶ長く感じたが、今日二回目の「しとどの窟」にたどり着くと今日はここで終わり。
再び同じ道を下り、車のあるところまでたどり着いた。
車の中で今日走ったデータを見ると、今日1本目の15kmの登りの時間は、前回に比べて約7.5%短い時間だった。
もっと早く登った気がしたが、こういう地道な登りの長時間の道のりで7.5%早いというのは凄いものだ。
それよりも、新しいホイールは数値に現れない感性に訴える魅力がある製品だということがわかり、大きな収穫だ。こういう味わいを楽しめる趣味に出会えたことも幸せだ。

時間はちょうど12時。
今日は湯河原で食事をしようと思い、自転車で通ってきた道の途中の店を眺め、「岩本屋」という店に決めた。


ランチ・メニューからビーフシチュー・セットを選ぶと、お盆いっぱいにお皿が並んだセットが出てきた。


お店の女性店員さんに、なぜ湯河原でビーフシチューなのか?と尋ねると、その店員さんのお父様がビーフシチューが得意で出しているそうだ。

山盛りのお盆の中心はビーフ・シチューだ。良く煮込んであり、使われている食材の品目も多そうだ。もちろんおいしい。肉は柔らかい。お芋のような具が多く入っていたので、尋ねると“ニョッキ”というものだそうだ。チーズや小麦粉、そしておイモの組み合わせで練られたもので体によさそうだ。


食後のデザートもある。おなかいっぱいだ。1,000カロリー以上自転車で消費したので何とか完食できたが普段だったら怪しいぐらいのボリュームだ。

食後、娘さんに話を伺うと、お父様は長年東京で食堂に勤務していて70歳になってから自分の店を持ちたいという夢をこの湯河原の地で叶えたそうだ。
てっきり湯河原で長年お店をやっていたのかと思ったが、このお店は昨年オープンしたばかりという。
この定食の品目の多さ。サービス精神にあふれている。
いろいろお話を伺ううちに、このお店に愛着が沸いてきた。
湯河原という土地は、自分にとってはミステリアスな魅力の土地に映る。単純に勉強不足なのだが、これからいろいろ調べていって峠登り以外でも湯河原を知っていきたい。
そう思えた。
「岩本屋」は車の駐車場もある。自転車を走る人も気軽に立ち寄れる。
皆に薦めたいお店だ。

(岩本屋・住所 神奈川県足柄下郡湯河原町宮上504)

おなかいっぱいのビーフシチューの味は、峠やホイールさえかすむほどのインパクトだ。
店を出ると、峠の涼しさは嘘のように思えるほどの暑い夏の熱気が待っていた。


(終) 2020年8月9日

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