2020年2月15日、日本を出発してミラノ・マルペンサ空港に到着した。
初日は夜に到着し、そのままホテルに直行。
翌日から始まるハードなツアーに備えて早々に就寝。
翌日はミラノ市内観光。
ドゥオモ、スフォルツェスコ城を見て、スカラ座博物館に入った。
貴重なスカラ座の中も覗くことができた。
いつかこの会場でオペラを観ることができたら最高である。
帰国してからスカラ座で上映されたオペラのブルーレイディスクを何枚か購入して鑑賞した。
やはり世界トップクラスの芸術というのは、人の心を震わせる魅力にあふれている。
それからドメニコ会修道院でレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を観た。
世界の名画を生で観る機会はそうそうない。とくに「最後の晩餐」は壁画なので日本の西洋美術館等に移動されて鑑賞できる機会もない。
ダヴィンチは絵を描いた後、何百年にも渡りキリスト教信者でもない多くの人々が絵を観るために世界中から押し寄せてくる事態になることを予想していたのだろうか?
旅行ツアーに参加しているおかげでガイドさんから丁寧な説明を聴きながら鑑賞することができる。海外の美術館巡りはガイドさんの力は大変ありがたい。
昼食後はバスでヴェネツィアに向かう。
船を乗り継ぎ、最後は小さな船で川を渡りホテルに乗り付けた。
ツアー中、最もモダンな作りのホテルに宿泊。
夜、時間があったので、街を歩くことにした。
ホテルはサンマルコ寺院前の広場から徒歩5分ほどの場所。
両側に ヴェネツィアン・マスクや革のバッグを売っている店などが連なる細い通りを歩き、広場に出てみた。
この広場は、仮面祭りがおこなわれている場所でもあり、その後イタリアがコロナウイルス感染が広まり、観光客が激減したニュースの際にこの広場の光景(コロナウイルス禍のbefore/after)は日本で何度も放映された場所でもある。
夜だというのに大勢の人が溢れていた。
長方形の広場、寺院の反対側にはステージが作られ、DJが音楽をかけて盛り上がっていた。
会場にいる人たちをよくよく観察すると年齢層が非常に高い。
自分よりも年長の人が多い気がする。60代~70代が最も多いように思えた。
高齢でも皆、背筋がまっすぐなのが印象的だ。
皆、夫婦や家族連れで、音楽に合わせて踊っている。
DJも参加者の年代に合わせているのか、古い曲が多い。
“Y.M.C.A”がかかると皆、大盛り上がりだ。
表情がとても良い。リラックスしていて楽しそうだ。
そして堂々としている。
人生の過ごし方の違いをまざまざと感じた瞬間だ。
日本は高齢化社会と言われているが、私のような50代半ば以後、60代、70代となると一様に老けて、いかにも“衰えた老人”と言う雰囲気の人が多い。
人生の楽しみや社会からも外れていく感じが漂っている。
イタリア人のこの元気さは衝撃だ。
イタリアでこの後、素晴らしい観光地を多く訪れたのだが、自分より年上の人達の姿を見て、自分の今後の生き方を教えられたのが、最大の旅の収穫だった。
ひとしきり、わが家族もこのイベントを楽しみ、ホテルに戻った。
翌日はいよいよ ヴェネツィアのゴンドラ、そして ヴェネツィアの仮面祭りだ。
ヴェネツィアの仮面祭りを初めて知ったのは学生時代。
週刊誌の巻末特集でたまたま取り上げられていた記事を読んだ。
その美しさと不可思議さに惹かれた。
その時の感動は、その後写真を趣味にする際にポートレート作品作りを選ぶ大きな影響を自分に与えていたと思う。
イタリアに行くのなら ヴェネツィアの仮面祭りは絶対に見たい、と心に決めていた。
2月中旬の今の時期はちょうど仮面祭りが開かれている。
今回の自分の旅行の目玉の一つだった。
翌朝、まずはサンマルコ寺院の広場に行き、寺院を観た。
その後、少し歩いてゴンドラ乗り場に向かった。
今回のツアーのハイライトのひとつ、ゴンドラ乗りである。
私たち家族は幸運なことに、アコーディオン演奏者とカンツォーネを歌うテノール歌手と一緒のゴンドラに乗ることになった。
おかげで目の前で歌と演奏を聴きながら、 ヴェネツィアの優雅な景色を眺める極上の時間を過ごすことができた。
この時間は家族4人の最高の思い出の一コマとなった。
日本で過ごす日常とは対極の、優雅な時間、お金で表せない貴重な価値ある時間であり、
この時間が永遠に続けば、と真剣に願うひとときであった。
ゴンドラを降りたら、各自昼食含め2時間の自由行動。
ここで街を練り歩くヴェネツィアン・マスクをつけた人たちを撮影して、家族皆でお土産を買うタイトな時間。
自分にとっては待ちに待った時間だ。
昼食に時間をかけるのはやめて簡単な食事を済ませることにしたが、幾つかの誤算が。
まずこの日の昼下がり、仮面をつけて歩いている人が思いのほか少なかった。
自分の期待が高すぎたのか?この時間帯はなぜか”撮りたい”と思う人に出会えず撮影をできずに終わった。この時間は家族のお土産タイムがメインとなっていた。
妻と2人の娘は2軒のカバン店を行ったり来たりして、品定めをしている。
ツアーの合間に、買い物の時間は意外と少ない。
ヴェネツィアだが、フィレンツェの革カバンの店が何軒か出ている。
やはりフィレンツェの革の質は良い。華やかな色使いのバッグの輝きは見事だ。
結局、大半の時間を買い物に費やすことになった。
皆のお土産を買い終えると、最後に ヴェネツィアン・マスクを買いに何軒か店を見る。
時間のない中、何点か品定めをして娘達に意見を聞くと、”こんな仮面がリビングの壁に飾ってあると、夜怖い”と言いだした。
自分の念願の ヴェネツィアン・マスクを買うせっかくの機会だったが、娘に言われたときに、自分も”そうかもしれない”と思ってしまい、結局、大きなマスクは買わずに小さなマスクをいくつか買って終わらせた。
これは帰国後、大きな悔いを残すことになったが、これも旅だ。
素敵なマスクを持って帰ることはできなかったが、家族四人で撮ったゴンドラの写真は
最高のお土産となった。
いろいろな思い出を作った ヴェネツィアを後にして、フィレンツェに向かった。
(終) 2020年2月29日
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