ロードバイクに明け暮れた一年だったが、もう一つ熱中したものがあった。
それは「ユーミン」だ。
今年の秋、昔から持っていたユーミンのDVD「WINGS OF LIGHT」を何気なく見返した。
1991年のコンサートDVDだ。画質は年代を感じるものの、ステージの豪華さと完成度の高さに感動して、DVDを買い足していった。
次に買ったのは2002年の逗子マリーナのライブDVD。
これにはぶっ飛んだ。WINGS OF LIGHTでも十分驚いたのだが、その10倍ぐらい感動した。
結局現在DVDは6枚持っている。
どれも完成度は完璧。
普通、音楽DVDは、2回目以後鑑賞する時は好きな曲2~3曲観て終わる場合が多い。
しかもそんなに何十回も見返すDVDは、そう多くはない。(Bob Dylan, Simon & Garfunkel, ショーケンぐらいか!?)しかしユーミンのDVDは違う。極力全曲通しで観ている。
しかし何度も。
音楽も聴きまくっている。9月以後、8割以上はユーミンを聴いている。
DVDはどれも素晴らしく、順番をつけたりしたくはないが、自分の中でNo 1.は逗子マリーナのライブだ。
ユーミンがだんとつに生き生きと楽しそうにライブをやっているように見える。
ゴージャスな舞台装置に打ち上げ花火。ロシアのスイマー達の水上パフォーマンスを絡めたステージは現在のミュージシャンではありえないほどお金と準備期間をかけていることがわかる。秋以後は、仕事が終わった夜はユーミンのDVDを見て、感動に浸る時間が多かった。
コロナ禍のこの一年を振り返ると、仕事以外の時間では、「ロードバイクとユーミン」で満たされ、癒された一年だった。
そんな一年の最後、昨日は逗子マリーナへ行くサイクリングに出かけた。
いつも車を止める駐車場から境川サイクリングロードを南下し、江の島まで出た。
そこからは海沿いの134号線を走った。
学生時代ウインドサーフィンをやっていて、ホームゲレンデは逗子だった。
この道は当時も、そして今も時々ドライブで走るなじみの道だ。
しかし自転車で走るのは初めてだ。
走るスピードが違うと景色も違って見える。
昔は稲村ケ崎や材木座・逗子湾にはサーファーかウインドサーファーばかりだった。
今はサーファーかSUPばかりだ。ウインドサーファーはもうほとんど見かけない。
材木座の駐車場から裏の道に入り、逗子マリーナに向かった。
車だと駐車場に入れる以外逗子マリーナをぐるぐる見て回る機会は今までなかったが、自転車だとその点自由に見て回れる。
自分が学生時代の’80年代逗子とは違い、だいぶひっそりしている感がある。冬だからなおさらだ。
自分がウインドサーフィンをやっていた時代の逗子。DVDのユーミンライブが行われた時(2002年)の逗子。そして現在の逗子。
ひんやりとした冷気を感じながら、時の流れに思いを馳せる。
もう高級リゾート地と呼ぶには寂しいぐらい外壁の朽ちた建物が、月日の流れを表している。時季外れだったからか?中のレストランでランチでもと思ったが、やっている気配がない。
静かな敷地内をゆっくり走る。
閉店した遊園地を周っている気分だ。
海沿いに出て、逗子マリーナ内のプールのある場所の裏側にまで出た。
一転して陽ざしが差し込み、心地よい空間が目の前に飛び込んだ。
高い防波堤のような壁は、何か安心感を与えてくれる。
そして反対側にはプールのある場所が、やはり高い壁の向こう側に見える。
寄り添うように壁に自転車を立てかけた。
穏やかな海辺の一角。
しばし無心でマリーナ内の白い建物を眺め、またペダルを漕ぎだした。
次に向かったのはBianchi逗子店。
今年秋にできたばかりの新しいお店だ。
店員の方とあれこれBianchiのことやサイクリングのことなど、お話しさせていただいた。
自分の乗る自転車メーカー、Bianchiの良いところは、自転車や自転車関連のウエアやグッズだけでなくアパレル(服)やバッグ等、日常用も多く充実していて、どれもセンスがよい。
そして直営店を多く出してライフスタイル全体を提案していて、乗っている人間としては楽しさに溢れる点にある。
あっという間に時間が過ぎた。
逗子店のそばでランチを取ろうと思ったが、自転車を置けてゆっくり食べられるところを見つけられず、134号線に出ることにした。
逗子湾の真ん中あたりで134号線に戻ってしばらく走ると、逗子湾西側の海沿いにカフェがあった。いつものように車であれば通りすぎてしまうところ、自転車であれば気軽に足を止めて入れる。
前から気になっていたところだ。
店名は「Surfers」。
サーファー・カフェの雰囲気だ。店内といっても大半は海に面した屋外に白いテーブルが配置されていて、外人のお客さんが多かった。
こういうお店に入るのは久しぶりだ。
テーブルに置いてあったお店のメニューや案内の新聞を読む。
最後のページはインタビュー特集記事で、インターFM「Lazy Sunday」でおなじみのDJ,ジョージ・カックルさんの記事があった。
インターFMはラジオでは必ず聴く番組で、ジョージさんの番組はよく聴いていた。
記事を読み最後にあった顔写真を眺めた。そして何気なく振り返ると、なんとジョージ・カックルさんご本人が6人ぐらいの人達と楽しそうに食事をしながら歓談しているではないか?何度も記事の写真と本人を見比べたが、どう見ても本人のようだ。
席に案内される時に店長らしき人とあれこれ話をしていたので、帰り際に”あの人ジョージさんですか?“と尋ねると、”そうですよ。よかったらご紹介します”と言われて驚いた。
”ただのファンですから“と固辞したが、気さくなお店の方は自然にジョージさんの方に私を連れてご紹介いただいた。
ジョージさんは笑顔で立ち上がってくれ、お話ししてくれた。
私はロードバイク姿だったので“どこから来たのですか?”と聞かれ、横浜から1時間30分ほどかけてきました、というと、喜んでくれた。
なんでもインターFMの放送以外で、Youtubeで「Lazy Days」というインターネット放送をやっていて、この「Surfers」から放送しているらしいのだ。
思いもかけぬ出会いで、ソロライドは楽しさを増して帰宅できることとなった。
134号線、逗子から江の島までは車はずっと渋滞だ。
自転車は道路の横をスイスイ通れる。
自動車の多い道を走ることはめったにないのだが、これだけ長距離、渋滞している車の横を走り続けるのは初めてだ。恐らく100台以上は抜いて走ってきただろう。
そのまま江の島までたどり着くと、右折をして藤沢駅へ向かい、そのまま通り抜け境川サイクリングロードまでたどり着いた。もっと暗くなっていると思ったが、思いのほか順調で明るいうちに走り抜けることができた。
ユーミンは今年の12月、コロナをテーマにした新作CD「深海の街」を発表した。
ユーミンはアルバム制作にあたりインタビューでこう言っている。
「コロナと対峙することに決めた」。コロナを題材にした曲は数多くあれど、ユーミンは“コロナと向き合う”覚悟で臨んだのだ。当然、音楽の重みが違うし、従来のアルバムとは違う。
このアルバムはセールスで到底図ることはできない。聴く人の度量にのみ、図られる。
といってもすべてが重い曲ばかりではない。
少し明るくて気に入っている曲がある。
「What to do? Waa woo」という曲で
”新しい自転車で 海辺とばしているの”
という歌詞で始まる曲だ。
自転車乗りにはぴったりの曲だ。
”空を飛ぶくらいに ペダル漕ぎ続けるの“
“忘れたくない悔しさに 涙で雲が滲んでも風がさらう”
と歌われる。
帰路に向かう川沿いのサイクリングロード。
この曲が頭に流れる。
2020年は終わりを迎えた。
来年はどんな年になるのだろうか?
(終) 2020年12月30日
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