小さな征服者たち

サイクリング

今日は境川サイクリングコースを走った。
最近は家の周りの坂道の多い道を1時間走るコースを中心に、先週は西伊豆スカイラインと心拍数の上がるサイクリングばかりしていたのに気づき、当分は心拍数の上がらない”頑張り方“で長時間、ゆっくり走ることにした。
いつもの瀬谷あたりからスタートし、藤沢に向かって走る。このコースは坂道がなく平坦で車に出会う場所も少なく安全だ。
梅雨の時期だが今日は終日天気が持ちそうだ。
3時間ぐらい走ろうと考えていたので、藤沢市民病院あたりで引き返し、瀬谷を通り抜けて町田まで行って戻る計画だ。

少し遅い時間、14:00から走り始めた。
平坦の道を頑張らないでゆるく走るのは気持ちいい。
すれ違うサイクリストの数は非常に多い。
東京の新規コロナウイルス感染者が増加傾向で50名前後が続いている。
見えない不安を人々が抱えた状態が長期化している。
コロナウイルスVS 人類の戦いは、人類が押されているように思える。

そんなことをぼんやり思いながら走っていると、不思議な光景に出くわした。


川にかかる橋の上に、まるで橋のX字型に合わせるようにして羽を広げている一羽の水鳥の姿だ。
橋の形に似せて目立たないように擬態化しているようにも見え、橋のてっぺんから仁王立ちをして、この地球の征服を企んでいるようにも見える。

水鳥だからといってバカにはできない。
今や目にも見えない細菌が地球全体で人間を包囲している時代だ。
この鳥の頭の中にもしたたかな作戦がきっとあるに違いない。

悠然とポーズをとる水鳥をしばし眺めた後、またペダルを漕ぎ始めた。
予定通り藤沢市民病院のあたりでUターンをして元の瀬谷あたりまで戻ると、そのまま町田方面へ進んだ。
この方面を行く道を走るのは初めてだ。
藤沢方面に比べると川沿いのサイクリングロードは狭い。
それでも初めての道は面白い。

紫陽花が道行く人にその姿を見せている。
少しずつ夕暮れに近づいていく。
17:00頃にスタート時点に戻れるあたりでUターンしようと決めた。
246号線手前1km当たりで、道の左側に全長1mほどの蛇が這っていた。
境川は魚も豊富で水鳥も多い。
蛇がいてもおかしくない。
この蛇は何を企んでいるのだろう。
ぼーっと自転車を漕いでいる男など目にもくれず壁際を這いずり回り、草むらに姿を消した。
何やら忙しそうだ。
蛇を通り過ぎ、246号線を渡り、八王子街道にぶつかったところで、Uターンする時間になった。
そのまま帰ることにした。
同じ道を通って帰ったが蛇はもういなかった。

3時間のフラットな道のサイクリングも悪くない。
この道はまだまだ知らない発見が多そうだ。
車を止めている場所までたどり着き、水を一飲みすると車を走らせた。

帰り道、境川に生い茂った青々とした草を思い浮かべた。
そして今日出会ったバットマンのような水鳥や蛇を思い出した。
車も多く通る川沿いの地に生息するたくさんの動物たち。

彼らが川の下で人の目を盗み、一斉に集まっている姿を想像した。
自分もついていって秘密の作戦に参加してみたい。
しかし、止めておこう。
したたかなあの川の住人達に比べたら私など無力の役立たずだろう。
それに秘密の作戦のいくつかは、人間の私に聞かせたくない話もあるに違いない。


(終)  2020年6月27日

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