桜の下、道は続く

のんびり街を行く

2020年4月4日


コロナウイルスの感染者は日本でもじわじわと増えている。
海外に比べると人口比の死者数は非常に少ないが、油断はならない。
むしろ迫りゆく感染者数や死者数の爆発的増加の夜明け前といった危機感が国民の間で蔓延している。自分は仕事は3月上旬から在宅勤務となっていて、先週は食事の買い出し以外はずっと家に籠もりきりだった。
神奈川県は、人混みへの不要不急の外出自粛願いが出ている。
感染する側にもさせる側にもなりたくない。
適度の運動は免疫力を高めるのと、今やすっかり定着した”社会的距離“を外出時には順守する、という行動規範を守り、先週到着したクロスバイク、Bianchi Roma 1という街乗り用の自転車を車に積んで、サイクリングロードまで行き、ソロライドに行ってきた。
本来であれば人との交流も楽しみたいのだが、仕方ない。

境川サイクリングロードという大和市から江の島を境川に沿ってサイクリングロードが作られている。
昨年も何度か走ったが、久しぶりにマイペースで繰り出した。
マスクをして走る。
不思議な気分だ。

しばらく走って気が付いたのだが、桜が咲いている。


コロナウイルスに関するニュースの毎日で、今も桜が咲いている、ということをすっかり忘れていた。

青空の下、川が静かに流れている。
走り始めてまもなく、川沿いの道の横を、桜が見事なバランスで空に向かってピンク色の花を広げている。
道はまっすぐと続いていく。
何気ないサイクリングの途中で、日本の様式美を久しぶりに見た気がする。
思わず立ち止まり桜を見上げる。
久しぶりに味わう、自然の感覚。

さらにペダルを漕ぎ、南に向かって走り出した。
心地よい暖かさ。

自分自身の肉体を確かめるように少しだけスピードを上げ、走り続ける。
久しぶりの感触。
風が心地よい。

しばらく走ると畑が広がっている。
のどかな景色だ。

ふと2月に行ったイタリアのことを思い浮かべた。
自分が旅行に行った時と現在のイタリアは完全に別世界だ。
日本でさえもこの1か月で様変わりをしている。

イタリアは無事に困難を乗り越えて、人も町も自然も今までと同じように維持をして復活できるのか?
日本もこれから深刻化するコロナウイルス被害を食い止め、乗り越えられるのだろうか?

自宅に籠っていると深刻な問いかけになりがちだが、
穏やかな春の日差しは、静かに勇気を与えてくれ、ポジティブな答えが空から降り注いでいるような気分だ。

さらに自転車を走らせていくと、川はS字に大きく湾曲していき、向かう先には桜が道にしだれかかるように覆っているのが見える。

自然にできたとは思えない道行く人々と桜の見事な調和だ。

ふと振り返ると、青々とした水がS字カーブの川に流れている。

桜の下をゆっくりと通る。
少し神妙な気分になる。
ゆっくりとしたカーブの道を、人が駆け抜けていく。

道はこの先、どこまでも続いていく。

桜を抜けると、再び青い空と日差しが道を包み込む。
風が強くなってきた。
少し強く漕がないと、スピードが緩んでいく。

どこまで行こうと目的地を決めず、しばらく無心で気が済むまで走り続けた。

(終)


2020年4月4日

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